ストック

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Theme:些細なことでも

「塵も積もれば山となる」という言葉があるが、例え些細なことでも積み重ねていけば、やがて実るものなんだなぁ。
私は、オーダーメイドのペンダントトップを眺めていた。

ちょうど去年から、私はほんのちょっとした貯金を始めていた。
1日100円、財布から取り出して貯金箱に入れる。
代わりに、それまで毎日のおやつの量を半分にした。
「1日100円、1年で36,500円?大したことないんじゃない?」
周囲の人はそう言うが、決して高い給与ではない身にとって、毎日のおやつは大きな楽しみ。私にとっては断腸の思いだ。

何度も誘惑に負けそうになりそうにながらも、私は周囲からすれば些細な貯金を続けていた。

そして1年後、ハンドメイドのアクセサリーを創っているお店で、私はオーダーメイドの小さなペンダントトップを創ってもらった。
節約のために、チェーンは別のお店で買ってきた。
これできっかり36,500円を遣いきった。

これくらいの値段のアクセサリーは、世間的にはそこまで高額なものではないだろう。
でも、事故に遭い身体に障害を抱えてしまった私には、自分のためのアクセサリーなんて贅沢品だ。

事故にあって自分の一部を失ってから、ずっと無力感に苛まれてきた。
就ける仕事も限られており、給与も半分以下になった。
今までは忙しいが仕事にやりがいを感じていた私にとって、今までできていたことができなくなってしまったことは本当に辛かった。
自分に自信が持てなくて、何もかもが嫌になって。
そんなときだった。このハンドメイドのアクセサリーショップと出会ったのは。

蒼が美しいラピスラズリのペンダント。オーダーメイドで加工もしてくれるらしい。
お値段は35,000円
昔の私ならすぐに購入していただろう。でも、そのときはとても手が届かなかった。
それが悔しくて、悲しくて、私は改めて自分の境遇を呪った。

でも、同じ障害を抱える知人に話したらこう言ってくれた。
「時間はかかるかもしれないけど、無理のない範囲で貯金すれば買えるよ。私たちだって、欲しいものを手に入れることができるんだよ」

その言葉に勇気をもらった私は貯金を始め、ペンダントをついに手に入れた。
他人から見ればほんの些細なこと。
でも、このペンダントは、私が障害と共に人生を歩んでいくための力をくれる。

「私にだって、できるんだ」
ラピスラズリが肯定するように静かに輝いていた。

9/4/2023, 9:04:30 AM