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「この世界中にいる、全ての少年少女たちに告げる。君が世界を救えるとするならば、何を望む?」
白い服を着た男は、星々を摘むように、子供たちを見渡す。
「この世界にいる、食べるご飯もない、あらゆる貧困と、飢餓に苛まれている子供たちに、永遠の食に困らないような、救済を!」
「よろしいよろしい。君は富める国に生まれた少女だね。でも、君は知っている。人を救うことの、幸せを。もし誰かのためになるならば、自身をも厭わない、その献身な心は、きっと誰かを救うだろう!」
少女はそこで、栞を挟み、本を閉じた。
チリチリと星屑が、まぶたの裏に焼き付いている。
男は、きっと本当の善人で、代償なんか、求めない。
そんな、話を望んでいる。
絶望に陥る君に、救いの手を。
決して裏切られることのない、救済を。
優しさで包まれるような、幸せを。
でも、なんで人は、物語の内に不幸を望むんだろう。
大抵の主人公は、不幸の中にある。
そして、最後には幸せを掴みとる。
でも、それって、なんだか可哀想。
不幸って、いっぱい転がっているものなのかな。
それじゃあ、この物語は、幸せに終わって欲しい。
そんなことを考えながら、少女は枕元に、本を置く。

7/26/2023, 10:17:08 AM