椎名千紗穂

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天を見上げる。星々は、己の輝きこそが天を彩っているのだと主張し合うかのように瞬いていた。雲ひとつない闇夜には、星の輝きすら目を細めてしまいそうになる。

そんな闇夜に、一条の光が翔ける。黒を切り裂くその光は、眩い限りに一瞬で空を走り抜けていく。
「そうだ、願い事」
口に出してはいけないんだったか、それとも唱えないといけないのたったか。いずれにせよ、確か3回は願わないといけないんだったか。たかが願うだけで、いちいちしきたりが多いとか思っているうちに光はどこかへと飛び去っていた。
「ま、そう上手いことはいかないか」
落胆するでもなし、こんな都市伝説みたいな話しに本気になるよつな歳でもない。少しだけいいものを見れたと、そんな風に自分を慰める。
そんな時、再び一条の星が流れた。
「なんだ、今日は嫌に星が降るな」
まさかアルマゲドンか? そんなことを考えていると、今度の星は何だかいやに輪郭がはっきりと見えた。おかしいと思って目をこすっていると、その光は己めがけて飛んできているのだ。
「な、嘘だろ!?」
あわてふためくも、遠くに見える光がこれだけ鮮明なら今更じたばたしても仕方ない。
なんて運命も、あったものか。
半ば諦め、目を閉じる。走馬灯のように人生が脳を駆け抜けていった直後のこと。
衝撃はない、代わりに聞きなれない言葉が耳朶を打つ。
「なあ、ちょっと道を聞きたいんだが」
「……はい?」
恐る恐る目を開けると、そこには巨大な輝く龍が佇んでいたのだった。

4/25/2024, 1:16:04 PM