つぶて

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君と肩を並べて見る月は綺麗だった。

金色の満月。蠱惑的な光。
じっと見つめていると、月は徐々に大きくなって、僕を飲み込んでしまう。琥珀色の海。僕は静かに溺れていく。どここらか君の声がする。綺麗だ、とても。僕の八重歯が伸び、尻尾が生え、爪が鋭くなっている。ウルフになった僕は、君の手をとって月を渡る。遠く、遠く、誰も手の届かないところへ。

「__ねえ」

僕は我に帰る。
君が月のように笑っている。「何考えてるの?」

「月が綺麗だ」
「月並みね」
「月と肩を並べられたら僕は幸せだよ」

君は上機嫌に脚をぷらぷらして、

「月の裏側、見たことある?」
「ないよ」
「見てみたい?」

真ん丸な目が僕を覗き込んでいる。
僕は目を逸らして月を見上げる。
君がくすくすと笑っている。

月夜が僕を揶揄っている。

5/27/2023, 7:35:37 AM