300字小説
旅は道連れ世は情け
「人魚の肉を食べた!?」
大雨の観光地。出掛けることも帰ることも出来ず、民宿の食堂に泊まり客が集まって、取り留めも無い話をしていたときのこと。二十代前半らしき青年が突然そんなことを言い出した。
「戸棚にしまってあったものを、それとは知らずに。どうやら父がとって置いたものだったのですが」
その後、不老不死となってした旅の話をする。見てきたような歴史の話に俺は夢中になった。
翌朝、抜けるような青空の下、私の話を夢中で聞いていた男が声を掛けてくる。昨日の楽しい話の礼だと町の地酒を渡してくれる。
「これが俺のSNSのアカウント」
登録し合って別れる。
こんな繋がりが出来るから、私はこの終わりなき旅を続けられるのだ。
お題「終わりなき旅」
5/30/2024, 12:18:55 PM