「とまぁ、こんな夢をみたんだが、君はどう思う?」
教授が膝の上で手を組む。
今、この研究室には私と教授しかいない。普段厳しい教授が、自分の夢の話を学生にするということは、多少なりとも私に気を許しているということだろうか。
「聞いてるか?」
「聞いています」
しかし、どう思うと言われても返答に困る。
教授の夢は、今のように研究室の席に座っているところから始まる。
足を組んでコーヒーを飲み始めたところへ、私がやってくるのだそうだ。そして、何やら話をした後、私が研究室から出て行く。その際、研究室を訪れた誰かとぶつかって尻もちをついた、と。
「あの、教授」
「なんだ?」
「正直に言いますと、なぜ私が出てきたのか気になって、感想を言うところではありません」
教授が足を組みなおす。
「……一応誤解のないように言うが、いつも夢に君が出てくるわけではないからな」
「そうですか」
良かった、と言うべきか迷う。
教授が気まずそうに私から目を逸らす。参ったな。
「感想は少し考えさせてください。今日のところは失礼します」
私も気まずくなって、研究室を出ることにした。
扉を開けて、
「きょーじゅー!」
同じ研究室の男の子とぶつかる。
反動で、尻もちをついた。
「え」
「あれっ、ごめん! 大丈夫? ……え、何?」
私と教授の視線に気付いたのか、男の子が困惑して私たちを交互に見る。
「教授」
教授の方を振り返れば、教授はコーヒーカップを持ったまま固まっていた。
「正夢ですか? 予知夢ですか?」
教授からの返事はなかった。
1/23/2024, 10:54:31 AM