我が子の幸せと健やかな日常を願う日。
その夜の食卓は、桃色を始めとする色彩豊かな愛情に溢れていた。
いつもより甘い香りに誘われたのか、くぅ、と食欲でお腹が鳴いたのを覚えている。
私の近くへ引き寄せたお皿の中身を取り分けながら、くすりと笑った母は「こんな意味があるんだよ」と優しい声で教えてくれた。
冬から春へと向かう時期。
それはもう一日ごとにスーパーの陳列棚が忙しなく入れ替わるので、幼い頃ひそかに感じていた待ち遠しさを少し懐かしみつつ、買い物かごの隙間を埋めていった。
今日の夕食も、今では私が作り並べている。
あの遠い夜に知った由来の話を、この子には、いつ伝えてあげたら良いのかな?
母の手料理とは、私の憧れの味でもある。
【ひなまつり】
3/3/2024, 1:33:12 PM