不知火

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 暗い海から次々に花火が打ち上がる。
 私は海上へ凧のように浮遊して、爆発を眺めていた。
 わかっていた。あれらは欲望の猛りだ。
 底の見えない暗流に、私の本性が隠れている。厭な笑みを浮かべ、大統領の妻みたいに高価な装いをした私。そいつに火が入り、宙を駆け上がって空にて弾けるのだ。耳をつんざく絶叫が飛び散る。尊敬されたい! 愛されたい! 悦びたい! この世の全ての人間よりも幸せになる権利が、命の価値があるのだと断定してほしい!

 目が覚めてみれば、涎でべたべたの枕に突っ伏していた。帰宅してから着替えていない服と洗っていない埃まみれの身体が痒くてたまらない。
 垢の詰まった爪で頭を掻きながら携帯を揺り起こすと、寝る前にぼんやり見ていた動画が現れた。ああ、ポップコーンを作る動画だったっけか……

1/24/2024, 3:56:52 AM