「踊りませんか?」
教室の隅に集まる埃のような存在が私だった。むしろ本当は私が埃なんじゃないか、椅子に座って大人しくしているのが本当は埃なんじゃないか、二つの存在が入れ替わっているのではと思わされるほど、私が埃っぽくてじめっとしていた。むさ苦しいよね、とにたにた笑みを浮かべながらこちらを見てくるクラスメイトの視線を感じながら、体を縮こませることしかできない。視線を向ければ一溜りもなく更に暴言を吐かれるだけだった。
そんな私に声をかけてきたのが彼だったから、そんな視線は余計に強くなった。本当にはた迷惑。私の平穏を脅かす彼はさも当然のように私の名前を呼んで、慣れたように体に触れてくる。図々しいにもほどがある。しかし私は彼の手を振り払うこともできず、ただ嵐が去るのを待つしかなかった。
私はシンデレラなんかになりたくない。だから、彼の言葉には顔を向けないと決めているのだ。
「ねえ、今度一緒に遊びに行こうよ」
例え相手が産まれた時から一緒に過ごしてきた幼馴染みであっても、中学で分かれ高校で再会したのであっても、彼の手を取ることは、私が王子と共に踊ることと同義となるのだ。
10/4/2024, 4:12:30 PM