一つのイガの中で栗である僕たちは
向かい合わせで住んでいる。
与えられた家のようなイガの中で
笑いながら話をしたり
どうでもいいケンカをしたり
慰め合ったりした。
人間によってイガをむかれたあの日
僕たちは離れ離れになった。
「誰かの糧になるなら私たちは生きてきた意味がある。
私は幸せだった。あなたとの暮らしは私の栄養だよ」
君は人間に連れていかれる間際に笑顔でそう告げた。
僕は君の言ったあの二言を自分の糧に変えて、
栗という自分の役目を果たすことを心に決めた。
8/26/2024, 6:25:32 AM