傾月

Open App

我が家のルール、それは「誕生日は家族で過ごす」こと。
娘が生まれた時に、今は亡き夫が決めたルール。

今日は娘の誕生日。遠方に住んでいる娘が、ルールに則って弾丸日帰り帰省の予定だ。
仕事が忙しいだろうから無理して帰ってくることはないのよと伝えてはいるのだが、毎回律儀に帰ってきてくれる。どうも、このルールがお気に入りらしい。
ルールを決めた夫は、彼岸で喜んでいるに違いない。

今回も無事帰宅。バタバタと慌ただしく入って来た娘は開口一番「ママ!ありがとう!四半世紀を無事に過ごすことが出来ました!」と言いながら抱きついてきた。
ああ、なんということでしょう。こんなに幸せなことがあるだろうか。返事をすることも溢れる涙を止めることも出来ず、ただただ娘を抱きしめた。

娘と一緒に夫のお墓参りへ行く。
あなた、見てた?と語りかける。わたし、この子に抱きしめてもらったのよ。羨ましいでしょ?わたしたちを置いて、早々と逝ってしまうからよ。残念ね。彼岸で悔しがるあなたの顔が目に浮かぶわ。ねぇ、あなた。わたしたちの娘は、本当に本当に素敵な子になったわね。


―――ワタシの誕生日[母]


                   #44【誇らしさ】

8/16/2023, 5:10:30 PM