明太子

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伝票に書かれた祖母の字
一人暮らしには余るほどに
段ボールに敷き詰められた梨
今年も一番好きな季節がやってきた。

祖母というのは一度聞いた好物は一生モノで
まるで永遠かのように
何度も何度も買うそうで、
電話越しにだめになっちゃうからと伝えても
変わらない相槌が耳を埋める。

梨に溺れる日々が始まる予感。
お皿いっぱいに切った梨。
白く透き通る果実に
祖母の手を思い出すほどには
昔から食べているみたい。

昔が恋しいわけではないけれど、
思い出が切ないわけではないけれど、
始めて好きだと話したあの日が
昨日かのような祖母の言葉が、
いつしかなくなるこの温度が、
今日はいつもより感じて涙が溜まる


10/15/2025, 3:24:04 AM