語り部シルヴァ

Open App

大事にしたい

目が覚めた。またソファで寝てしまったらしい。
起き上がると暖かい感触が手にあることに気づいた。
俺を見守るようにうつ伏せで寝ている...
こいつもまた...か。

抱き抱える前に腕の震えを深呼吸で抑える。
壊れない...壊れない...よし。
起こさないようにそっと抱えあげてベッドに移す。
布団をかけて壊さないよう意識しながら撫でる。

こいつは俺よりすごく小さいし力も弱い。
だから小動物みたいな可愛さもある。
怒ってる時も可愛いからあんまり怒られてる気がしない。

だからこそ、自分の力で壊れてしまわないかと思うと触れようとする前に手や体が震える。

普段は素っ気ない態度をとるのもベタベタと近づいてうっかり壊さないようにするためだ。

「じゃあな、おやすみ。」
ボソッと呟きさっきまで寝てたソファに腰掛ける。

大事にしたいからこそ触れるのが怖いなんて、
独りだった頃は想像できなかった。
腕はさっきよりもマシだが震えている。

俺も随分弱くなったもんだ...
けど、それで触れることができるなら悪くないかもな。

語り部シルヴァ

9/20/2024, 8:17:52 PM