川柳えむ

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「シーザー暗号って知ってる?」
「何それ」
「古代ローマのガイウス・ユリウス・カエサルが使ってたって暗号」
「どんなの?」
「元の言葉を1文字ずつ手前に3つずらして作る暗号」
「たとえば?」
「HELLOならEBIILになる。これを解読するには逆に後ろに3文字ずらせばいい。後ろにずらして作ったりもするし、特に文字数も決まってはないみたいだけど」
「面白そうじゃん」
「じゃあ問題です。えーと……COFBKAは?」
「後ろにずらせばいいから……FRIEND!」
「正解!」

 中学に入学して、そこで君と出会った。君と僕は元々趣味が合うようだった。
 たまたま知ったその暗号を、君は楽しそうに教えてくれた。
 暗号でする会話は、まるで二人だけの合言葉のようで、なんだか特別なものに感じていた。
 そしてここから謎解きに興味が湧いて、いろんな謎にも挑戦した。一緒にいろんな謎解きをしたし、そういったイベントで遊んだりもした。
 高校も同じところへ進学し、相変わらず、一緒にいろんなことを楽しんだ。

 楽しかった日々は過ぎ去って、あっという間に高校を卒業する日。
 お互い3年に上がってからは、受験の為、一緒に遊ぶことも減っていた。
 君が遠くの大学へ進学すると知って、昔みたいな日々はもう戻ってこないんだと気付いた。
 また、一緒に笑い合いたい。それだけでいいのに。
 卒業式も終わって、そろそろ帰る時間。最後に席に座って、今になって気付いた。
 机に何か入っている。――手紙?
 手紙を開くと、中に書かれていたのは、明らかに君からの挑戦だった。

『F 1 74777776543』

 暗号。面白そうじゃん。
 僕達が最初に出し合った謎。それがシーザー暗号だった。
 もしかしてこれもそうなんじゃないかと、直感的に思った。
 だとしたら、Fは――I?
 数字もずらすのか? なら1は4だな。うーん、よん、し、フォー……。
 で、次の11桁の数字は一塊か? えーと……070……ん? 電話番号か? 電話――……!

 僕は出てきたその番号に急いで電話をかけた。


『愛言葉』

10/27/2023, 12:42:58 AM