せつか

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「坂だよ!」
「知ってます!」
「·····、まっ·····!!」
「掴まってて下さい!」

二人で乗った自転車が、ぐんぐん速度を上げて坂を降りていく。緑の木々や街並みが後ろへと流れていくのを風を受けながら見送る。
「気持ちいいですね!」
「え!?」
「風が気持ちいいですね!」
「あぁ、うん!」
彼の両肩に手を乗せて、稲穂のような金髪が風を受けて波打つのを見下ろしている。
「このまま海まで行きましょうか!?」
「いいけど、重くないのかい!?」
「気になりませんよ!」
このまま道なりにまっすぐ行けば、やがて浜辺に辿り着く。籠に乗せたジュースがガチャガチャ音を立てる。流れ去る風の音。タイヤが坂を滑る音。合間に重なる互いの声。
「海に着いたら何をしましょうか!?」
「なんでもいいよ!」
「着くまでに考えておいてください!」
「分かった!」

着いた途端、私達は自転車を砂浜に倒してそのまま寝転がるだろう。そうして荒い息を吐きながら、どちらともなく笑い合う。
そんな光景が頭に浮かんで、私は彼の両肩を掴む手に思わず力を込めた。

END


「自転車に乗って」

8/14/2024, 11:48:14 AM