気分屋の現実逃避日記

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【愛情】#90

儚く散る愛情の欠片を
誰かが拾ってくれるだろうと信じていた。
拾ってくれたのか、たまたま触れたのか
それは定かではなかった。
だか、あの人だという確信はあったのだ。
周りを見渡せば、様々な欠片が落ちていた。
友情、家族愛、絆、愛情。
振り返れば、殺意までに。
どれも透き通るように見えた。
どれも綺麗だと思った。
それでも、触れようとする私の指先からの
磁波で逃げていく欠片が、ただ一つあった。
きっと、最後のお告げだったのだろう。
もう一度、もう一度、辺りを見渡そう。
あぁ、どれも美しいじゃないか。
どの愛も、どの愛情も、どの愛し方も。
私は、あのお告げに
気づくことのできなかった愚者であるが、
無限の欠片を映した眼を持った賢者である。
濁る眼の先には愛情の欠片がある。
私はそれに頷き、身体を180度回転させた。

11/28/2023, 10:01:20 AM