Amane

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勿忘草

グシャ
「俺がこうゆーの嫌いだって知っててやってんの?」
足元に小さな青い花が散らばって、彼の高そうな靴の下敷きになった。
「最悪。靴汚れたじゃん。」
眉間にシワを寄せて、靴の裏を覗き込んでいる。

チャンスだ、と思った。すかさず彼の頭を抑えその顔面に自分の膝を運ぶ。鼻血を出して倒れ込む彼に、思わずシャアッ!とガッツポーズをしていた。
「お、お前、何してんだよ!」
「あんた、その靴誰の金で買ったかわかってんの?」
目の前で倒れ込むこの男に金を貢ぎ、執着していた事実が受け入れられない。
「この花の花言葉知ってる?」
「んなの、知らねーよ!」
顔を真っ赤にして立ち上がろうとする彼の顔面に花束を投げつけようとしたが、やめた。
「『私を忘れないで』。」
少し沈黙が続き、彼が私の頬に手を伸ばしながら言う。
「なんだ、やっぱりまだ俺のこと……。」
「……なんて、死んでも言うかバーカ!!!」
手を跳ね除け、最後に平手打ちを食らわせた。

春の似合うこの花が、きっとニセモノの愛を忘れさせてくれるだろう。

2/2/2024, 11:12:05 AM