小絲さなこ

Open App


「あっぱれ」



「眩しい……」
呟いて汗を拭う。
見上げれば、すっきりとした真っ青な青い空。雲は遠い山の方に見えるくらいだ。

明日から文化祭。
俺たち文化祭実行委員は、校門から校舎へ続く道にゲートを設置する作業をしている。

「ねぇ、知ってる?」
隣のクラスの実行委員の女子が俺に話しかけてきた。

「なにを?」
「『あっぱれ』って『秋晴れ』が語源なんだよ」
そう言って彼女は胸を張る。
揺れるふたつの膨らみを視界に入れないようにしながら、わざと気のない相槌を打つ。

「なーんて。嘘だよー」
「そんなことだろうと思った」

揶揄いやすいと思われているのだろう。
彼女は毎日のように損にも得にもならない「嘘豆知識」を披露してくる。

「本当はね『あわれ』が語源なんだよ」
「……」
「そんな目で見ないでよ。これは本当!」
「あぁそう」
「本当だってばぁー!」

何がそんなに嬉しいのかわからないが、楽しくて仕方ないといった顔をしている彼女。
それに対して、微笑ましいと思う自分は何なのだろう。

あぁ、そうか。
納得したら、笑えてきた。

「な、なに笑ってるの〜?」
「いや、五歳の従姉妹と同じことしているな、って思って」
「ええ……ひどっ……五歳児じゃないしー!」

やたらと大きな五歳児に腕を掴まれた俺を、同じ実行委員のメンバーたちが呆れたような目で見ている。見せもんじゃねーぞ。

「あーはいはい、十五歳児でしたね」
「ちがーう!」



────秋晴れ

10/19/2024, 2:22:50 AM