ななし

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3.最悪
「最悪だ...」
それに気づいた瞬間思わずそう呟いてしまった。なんだこれは。いや、何か―――というか誰かはひと目見ればわかる。俺が上京してきてからお世話になりっぱなしな黒尾と木兎だ。あの特徴的な髪型、うん、間違いないだろう。ただこの状況は理解しかねる。何故人の家で酔って伸びているのだろか。第一今日はうちに来るなんて話は聞いていない。まあアポなしでやってくるくらいなら呆れながらもちゃんと迎え入れるだろうが、家主のいない家でへべれけになった挙句部屋を散らかすようならその限りでは無い。というかいつから飲んでいるのか。結構な数の空き缶が転がっているが、まさか俺と入れ違いで朝から飲んだくれていたのだろうか。
取り敢えず玄関に突っ立っていてもどうにもならないから部屋に踏み入れる。
「酒臭いな」
当たり前ではあるが、そこに踏み入れると一気に酷くなる。なぜ俺が片付けなければならないんだと独り言ちつつ、片付けないことには俺の居場所もないので渋々片付けに取り掛かる。
そろそろ片付けも終わりそうな頃、ようやく何故このような事になっているのか思い当たる。今日は俺の誕生日であり、二十歳になり酒が解禁される日だからだろう。ただ今日は大晦日でもあり、わざわざ当日にやって来てくれるとは思っていなかったので満更でもない。いや、こいつらの事だ。大晦日にこき使われるのが嫌で逃げてきただけだろう。自分の誕生日を祝ってくれる人がいることに感謝しつつ、それでもやはり主役の到着を待てないこいつらにここのろ中で毒づきながら片付けを済ませてしまう。
机の下に隠されていたプレゼントには気付かなかった振りをして、晩飯の準備を始める。きっと全く起きる気配のないアイツらも食べていくのだろう。

6/6/2024, 12:49:47 PM