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 私はいわゆる勝ち組である。
 なぜなら私は、この国の王女だから。
 小さい頃から教育を施され、食べ物にも困らず、何不自由なく暮らしてきた。
 淑女教育だけ面倒だったけど、それ以外は文句なし。
 そして運命の人が、私を迎えに来るのだ。

 私はその日を楽しみにしながら、これからも自由気ままに人生を過ごしていく
 そう思っていた……
 しかしそうは問屋が卸さない。

 数日前父と母が、国のために跡継ぎを産めと迫ってきたのである
「お前もいい年頃だ、釣り合う見繕ったからこの中から選びなさい」
 私の目の前に、候補者の似顔絵が並べられる。
 けれど、それを一瞥もせず、私は答えた。
「いいえ、相手は私が探します」

 もちろん父と母は猛反対。
 最初は口げんか程度だったけど、すぐに血を血で洗う親子喧嘩になる。
 あまりの騒ぎに、城勤めの近衛兵が出張って来る事態になった。

 けれど私を止めることは出来ない。
 最終的に私が父と母と近衛兵を全て殴り倒し、私の希望を押し通した。

 とはいえ、運命の相手を探すのは至難の業。
 そこで王女特権を駆使し、とあるお触れを出した。

 『私の結婚相手を募集する』
 『条件は“巡り合えたら”という問いかけに、正しく答えること』
 『なお、身分は問わない』

 私の出したお触れに、国中が――いや国外も沸き立った。
 無理もない。
 ここで私に見初められれば、一気に勝ち組の仲間入り。
 やる気にもなる。

 でも残念だね。
 これは出来レース……
 私には心に決めた相手がいるのだ。

 実は、私には前世の記憶がある。
 あの人とは、人生の大半を一緒に過ごし、死に別れる前に再開を約束した……

 ここまで言えばお分かりであろう。
 『問いかけ』というのは他でもない、私とあの人との合言葉なのだ
 これだけ大騒ぎすれば、きっとあの人の耳にも届いているに違いない。

 ちなみに問いかけの答えは『好き好き大好き愛してる』。
 前世でのあの人のプロポーズの言葉である。
 正直生まれ変わるとは思いもしなかったので、ついふざけてしまった。
 けれど絶対に被らないだろうという答えなので、ファインプレーである
 何が幸いするか、分からないものだ。

 合言葉ならぬ愛言葉。
 あの人はどんな顔をして、私に愛を囁いてくれるのだろうか?
 まだまだ先の話だというのに、眠れないほどあの人の愛言葉《プロポーズ》が楽しみだ

10/27/2024, 12:27:01 PM