「…創兄さん、向こうでも元気かな」
ソファの隅っこに三角座りで、優が呟いた。
ちらりと見やると、優は心配そうに淋しそうに床に視線を落としていた。
「…さぁ?あいつ片付ける能力だけ抜け落ちてるから、すぐゴミ屋敷できあがってそうではある」
社会人となり一人暮らしを始めた兄貴にふたり、思いを馳せる。
俺らを残していくことを渋っていた兄貴の背中を押したのは、俺と優。
俺と優に、兄貴に持ってはいけない感情を抱いている、という共通点ができて、それを自然とお互いに感じ取ったのは、ずっと昔のことだ。
「…やっぱりさみしい」
この空間にはふたり。
だからこそ、優は震えるような吐息混じりの一人言をこの静かな空間に落としたのだろう。続くように息を吐いた。
「…でもまぁ、俺はちょっと安心してる」
「……それは、僕もわかるけど」
「わかるんだ」
そりゃ、ね…と歯切れの悪く膝をきゅっと抱えた優に、ふ、と目を細める。
兄貴がいる生活は大変だった。
家事とかは得意だからそういう物理的な面じゃなくて、感情をひた隠しにしてそれでいて自然体でいなきゃいけない面。
だから兄貴の一人暮らしを後押しした部分もある。
その分空いた心の穴はよく目立った。
「…啓兄さんはここにいるよね」
「まぁよっぽどのことがない限りな。…優こそどうなの」
「僕はここにいるよ。…啓兄さんまでいなくなっちゃったらもうわかんなくなっちゃう」
それは俺も、と返した。
小さい頃から理解者はお互いのみ。
だからこそ気づき上げられたこの関係は知らず知らずのうちに歪みを増していく。
元気かな 啓→創 優→創 #209
(恋愛感情がなくてもどの世界線でも創はブラコンだと思ってます)
4/9/2025, 2:14:43 PM