うずき

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《相合傘》

「はぁ…また雨降ってる…」
「え?!今日の予報雨って言ってたっけ?」
「なんか急に降るかもみたいな予報だったよ」
「うわ〜最悪。傘持ってないよ…」

学校を出ようとした時、私たちは突然の雨に…帰る道を阻まれてしまった。かなり降ってるし、どことなく梅雨を感じさせる。

「どうする?ちょっと雨宿りする?」
「う〜ん、私は傘持ってないけどさ、そっちで実は持ってました〜ってのはない?」
「どうだろ…」
私はガサガサとカバンを漁る。…すると少し小さめだが傘が出てきた。

「あ、あった」
「ナイス!じゃあ一緒に帰ろ!相合傘で」
「小さいから多分どっちも濡れちゃうけど…いい?」
「そう言われるとそうかぁ…」

などと雨が弱まるのを待つかどうかと喋っていたら下駄箱からある男の子が出てきた。途端に彼に目を奪われた。なぜなら…彼は私の好きな人だ。よく見ると傘を持ってなさそうだ。そして手元には傘がある。チャンスではないか?彼と身体的にも精神的にも近づけるのではないか?どうしよう。考えてる内に彼はカバンを頭の上に掲げてダッシュで帰ろうとしている。もう決心しなければならない。よし、声をかけよう…!

「う〜ん、よし!やっぱ相合傘で帰ろ!今度なんか奢るから!」
「………」
「お〜い!」
「…え?あっ…そぅぃぇ…」
「ん?なんか言った?」
「な、な、何でもない!よし、帰ろう!」

…そうだった。私は彼女との相合傘が半ば決まっていた。周りを見ずに突っ走らなくてよかった。危うく友情に亀裂を入れる所だった。

そうして私は恋ではなく友情を取って相合傘で帰った。

6/19/2024, 3:03:25 PM