ひとつぶ

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「お前がいるからここまでやって来れた」

君はそうやって自分に笑いかけてくれた。ポジティブに捉えたいのになんだかその言葉が上手く自分事に受け取れなくて、抵抗のように目を逸らした。

ここで『自分もそうだ』と返せたらどれだけ可愛らしいことか。そんなことずっと前から分かっているんだ。どれだけ理解していても、喉元で上手く言葉にならなくなって、あきらめてしまう。

君は言いたいことを言い終えたから帰ろうとしていて。
変わらないと、貰いっぱなしは駄目だ、なんて一丁前に考えて咄嗟に袖を掴んだ。その癖にまた沈黙に逆戻り。君を困らせるはずじゃなかったのに。

「…別に今じゃなくても、纏まったらでいいよ?」

分かってるからさ、なんて言って自分の手を袖から優しく外した。君がそうやって優しくするから、なんて八つ当たりをしてみる。言葉にするのは苦手な癖に、妄想癖だけ酷くなる。

感謝も、謝罪も、君への想いも、いつか言葉にできる日が来るのだろうか。その時まで隣に居てて欲しいよ。



#言葉にできない

4/11/2023, 4:11:05 PM