春風とともに
春風とともに流れ込んできたのは
『 僕の心を救う、きみの歌声だった 』
僕は、明日に手術を控えている。
『 数週間学校に行けないから、勉強とか部活とか
置いていかれるんだろうなぁ、、 』
なんて別のことを必死に考えてはいるが、
やっぱり手術がたまらなく怖い。
時計を見る度に
あと何時間かぁと憂鬱な気持ちになるし、
ため息なんていくつついたか検討もつかない。
明後日までタイムリープできないかなぁなんて
考えていると、一人の少女の歌声が聴こえた。
『 今日も上手く歌えなかった 』
もうちょっとで発表会なのに。
今日だけで、もう何回ため息をついただろう。
わたしは恥ずかしがり屋で
人前に立つとすごく緊張して、
どうしてもいつも通りの声が出せない。
とにかく、練習が一番だよね!と
心を奮い立たせて練習をする。
でも、歌い始めても、
どこか歌声に緊張が混じってて。
『 やっぱり、私ってだめなのかな 』
『 すごく、綺麗な声だ 』
僕は、率直にそう思った。
少しぎこちないけれど、
温かくて包み込んでくれるような歌声だ。
きっと、歌っている子は優しい子なんだろうなぁ。
いつの間にか、僕の頭からは
手術の緊張がすっと消えていた。
ずっと聴いていたい。
そう思った瞬間、歌声が消えてしまった。
不思議に思い、窓から下を覗いてみると
一人の少女は、涙を流していた。
あの子がなんで泣いているのか分からないけど
居てもたってもいられなくなって
急いで紙とペンを手にとった。
『 あなたの歌声は、とても素敵で、、』
いや、違うな。
こういうのは、ストレートに書いた方が
絶対に想いは伝わるはずだ。
そして、書き終えた紙を、紙飛行機にして
その少女へ飛ばした。
『 届くといいな 』
『 あれ、これどこから飛んできたんだろう 』
目の前に、紙飛行機が飛んできたのを見て
驚きで涙もひっこんだ。
わたしもどこかへ飛ばそうかなと
紙飛行機を上に掲げた瞬間、
なにか文字が透けて見えた。
思わず開いてみると、再び涙がこぼれた。
『 あなたの歌声に救われました 』
明日手術を受ける者より、と書いてあるから
きっと、あの病院のだれかが
わたしの歌声を聴いていたのだろうか。
どんな人かも分からない。
でもこの紙飛行機に書かれていた言葉は
わたしの心を救ってくれた。
『 明日は、なんか上手く歌えそうだ! 』
いつの間にか、涙は笑顔へと変わり
いつもと同じ帰り道も、きらきらして見えた。
春風とともに飛んできたのは
『 わたしの心を救う、紙飛行機だった 』
3/31/2025, 2:28:37 AM