お題《柔らかい雨》
いつも雨は、嫌な記憶をつれてくる。
星空の町から遠ざかる果ての町で生まれた。
星空の町には、星読み姫がいる。星の姫は、夜の底で煌めくひとしずくの光――星神から遣わされた救いだと云われている。
「ねぇ星の姫が泣くと、流れ星になるって云われてるけど本当なのかな」
「さあな」
幼馴染みのロトアがぶあつい本を片手に、星のようにきらきらとした瞳でこちらを見てくる。
「レンは興味ないの?」
《星の姫》――よく星を読んで聞かせてくれた。
今も心に降る流れ星の雨。
彼女の光に満ちたその笑顔。
忘れられない月灯りの雨を浴びて、交わしたひとひらの言の葉。
落ち着かないのは、全部――彼女のせいだ。
11/6/2023, 11:33:32 AM