テーマ『君と』
「君とだから、ここまで来れたと私は思うよ」
パーティー中、そう唐突に言われたものだから、僕は「へ?」と間抜けな返事をしてしまった。
「へ? って、まさか自覚がないのかい? 君に助けられたことは何度もあったというのに」
「ええと、お礼を言われてるってことでいいのかな」
確かに、たった二人で立ち上げた会社は数年で急成長し、大きな会場を貸し切ってのパーティーをできるまでになった。でも、最初に声をかけてきたのはいまや社長となった目の前の友人だし、僕は副社長という肩書きこそあれど、友人ほど革新的な事業を立ち上げたわけでもない。
「そうだとも。……ありがとう。あのとき私の話を馬鹿にせず聴いてくれて」
「馬鹿になんてするもんか。本当に面白いと思ったんだから」
確かに、最初の事業は一見すると荒唐無稽のようだったが、そこには明確な道筋が見えた。初めは苦労したが、今こうして成果を実感できている。
「嬉しいことを言ってくれるね。じゃあ、これからもよろしく頼むよ。君と私となら、どこまでも行けるさ」
そう微笑んで友人はグラスをこちらに差し出す。
「どこまでも、か……うん、そうだね。乾杯」
それに応えるように、僕は自分のグラスを合わせた。
4/3/2025, 11:21:42 AM