「天国なんてあると思うか」
「……え?」
珍しくキミが問いかけてくる。一瞬、私たちの間には沈黙が満ちる。
「うーーん、あっては欲しいと思うよ。あるかどうかは、なんとも言えないね」
要領を得ない私の答えにキミはそうか、と呟いたっきり黙ってしまった。
「珍しいね、キミが私に質問するなんて。さかもそんな、答えがないようなこと」
「子どもたちが、」
「?」
「子どもたちは天国に行けると思うか?」
「……ああ」
今朝から大々的にニュースで取り上げられている話だ。遠足で子供達が乗っていたバスが事故を起こしたという。
「せめて行って欲しいよね、天国。賽の河原なんかじゃなくて」
「……ああ」
キミは優しすぎる。面識なんてないのに、死んでしまった子どもたちのことを深く思ってしまう。考えすぎてしまう。
本当に優しい人。私はキミのことを抱きしめた。いつもなら嫌がるキミは、今日は静かに私の胸のなかに顔を埋めた。
5/27/2024, 1:49:06 PM