あなたの両手を、温めるために存在しています。
それぐらいしか出来ません。
でも、この季節になると、必要としてくれる。
忘れられていなかったのだと、嬉しくなる。
何故、両足は毎日のように包みこんでいるのに、その美しい両手には、冬の間しか私を必要としないのか。
あなたの両手を包み込み、守りたい。
私の名前は、手ぶくろ。
そろそろ、一年ぶりの再会でしょうか。
表に出ると、手がかじかんでしまう寒さです。
気付けば私は、クローゼットの奥の方に追いやられていますが、きっとあなたは、私を探し出してくれる。
あなたが心から愛する、あの人からのプレゼント。
それが私。だからきっと特別。
毎日あなたの両足を包み、一日をともにする靴下達が、「最近会っていないようだ」と囁き合っていても。
私には、あなたの両手を温める、それぐらいしか出来ないから。
そのためにこの世界に存在しているから。
もしも、あなたの心が冷え切ってしまっていたとしても、私が温められるのは、あなたの両手だけ。
今年の冬は、クローゼットの奥に埋もれたまま、あなたの両手に触れられることはないのかもしれない。
それでもいい。
きっと、新しい「手ぶくろ」が、あなたの両手を温めてくれるから。
私の目的は、あなたの両手を温めること。
それを私以外の誰かに託すことも、やぶさかではない。
ただ、あなたの心を、そして両手を、氷のように冷やしてしまうことは受け入れがたい。
だから私は、あの人を許さない。
クローゼットより愛をこめて。
そして、憎しみの念をこめて。
12/27/2024, 9:12:54 PM