もんぷ

Open App

空に向かって

 空。かわいいかわいい妹。顔が似ていると言われることが多いが、自分達では似ていないと思っている。そもそも空にとっては兄と顔が似ていると言われて良い気はしないだろう。空は昔から自分のあとをつけまわしてくるのがとてもかわいかった。自分がピアノを習えば空も習い始め、水泳も、習字も、ダンスも…真似しようとしてもやはり年齢のハンデがあるのか、空は苦手なことが多かった。それでも置いてかれないようにと人一倍練習する空がかわいくてまぶしくてたまらなかった。
 そんなかわいい空が、ある日好きな男に振られたとすごく落ち込んでいた。どうやらクラスの男子にからかわれてひどい言葉をかけられたらしい。自分が中学に入って学校が離れてしまったせいで空を守れなかった。悔しい。許せない。空に向かってそんな言葉を投げかけた奴らが許せない。空はかわいくて優しくて明るくて綺麗で正しくて…そんな空を傷つけるなんてありえない。というかもう空を傷つけるような奴は近寄らせない。空にはおれさえいればいい。そう思っていた。
 空は男性不信が強まり、ついに自分と話せなくなった。いつものような弾ける笑顔が見れなくなった。なぜだ。おれが空に何をしたっていうんだ。男というだけでシャットアウトされるならもうやりようがない。自分が姉なら今でも空の一番近くで慰めてやれるのだろうか。それなら、女に生まれれば良かった。自分は空と生きるために生まれたのだから。空を守るために生きているのだから。いつかそのことを空に伝えることができる日が来ることを願う。

4/2/2025, 11:18:07 AM