鶴上修樹

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『脳裏』

「ねぇ。いつになったら、僕のものになるの?」
 ――これは、夢だ。なぜ、そう確信するのか。だって、目の前にいる高身長の男性は、私の最推しだから。
「僕、結構本気なんだよ」
 最推しが、私の頭を撫でてくる。めちゃくちゃ嬉しい。嬉しいけど。夢とはいえ、彼を推しているファンに、あまりに申し訳ない。
「……今から、虜にするから」
 距離が近くなり、最推しの色気が漂ってくる。最推しは、私よりも年上である。
 ――チュッ。
 最推しが、私に一つ、キスをしてきた。夢なのは分かってるのに、唇に感覚がある。
「……っ、はぁ。唇、やわらか……」
 吐息混じりに言うから、夢なのに、身体が熱くなってくる。夢の中の最推しは、大人の色気で溢れている。
「顔、めっちゃ真っ赤。……興奮してきた?」
 おでこをくっつけて、大きな手で私の頬を優しく触り、小さい声で尋ねる最推し。あの、やめて。これ以上は、ダメ。このままだと、狂わされてしまう。
「……可愛い」
 最推しは一言言うと、私をゆっくり押し倒してきた。最推しの目は獣のようにギラついていて、男の顔だった。
「もう、我慢できない」
 最推しの身体が、私にぴたりと密着してきた。あぁ、私、抱かれ、る――。

 ――チュンチュン。
「……っ! やっ、ぱり……」
 朝を知らせるすずめの声がして、目を開けたら、自分の部屋のベッドの上。当然ながら、最推しはいない。つまりは、現実世界に帰ってきたのだ。
「分かってたけど、これが夢ってのはやばいなぁ……」
 夢の最推しを思い出して、ボワッと身体が熱くなる。お色気ムンムンな最推しが、脳裏にがっつりと焼きついてしまっているのだ。
「……ずるい」
 夢って、反則。しばらく、最推しをまともに見れそうにない。

11/9/2024, 1:02:02 PM