「寒い〜寒い〜」
私はガチガチ震えながら塾の帰り道を急いでいた。
自転車という交通手段を取っている為、余計に北風が敵のように吹き付けてくる。
肌に当たって乾燥するっ、しかも手は氷みたいに冷たいよ〜。
半ば涙目の私。
家を出る時に、遅刻寸前で、マスクは何とか掴んで来たけど、いつもの、手袋、マフラー、イヤーマフセットを忘れてきてしまった。
余裕があれば、カイロもポケットに入れて来たかった程、寒がりなんだよね。
「あ、柚月じゃん!」
不意に呼び止められて、止まると、コンビニから出てきた私の友人が手を振ってた。
「真希!偶然、買い物?」
コンビニの方へ向かい、自転車を止めてから聞くと真希が笑顔で頷く。そして、顔をわずかにしかめると、手をすり合わせて言った。
「おにーちゃんにお金上げるから買ってこいってお使い頼まれて。でも、寒くてさー、来るんじゃなかったよ」
「分かる。私なんて自転車だよ?寒いよ、今日急いでて、手袋もマフラーも忘れちゃった、もー氷の世界だよね」
その言葉に真希は苦笑した。
「柚月って極度の寒がりだもんね〜。あ、でも私と会えて運いいよ、はい、これ。」
そう言って、真希が、コンビニの袋から取り出したのは、ホカホカした肉まんだった。
「お金余ったから、沢山買ったんだ。あげるよ」
「え?いいの?」
私の声が思わず弾む。
目は肉まんに釘付けになってる。
「いいよー、はい、あったまって」
「ありがとう」
肉まんを、受け取ると、柔らかくて温かい感触に感動する。
「いただきまーす!」
一口頬張ると、肉汁たっぷりのフワフワの生地が口の中で広がっていく。
「おいしー」
そう言うとパクパクとあっという間に食べてしまった。
「すごい勢いだね!」
目を丸くする真希。
「塾帰りでお腹すいてたの、すっごく助かった、暖まったし。明日学校でジュース奢るね」
私が至福の気持ちで感謝を告げると、
「やったっ、私のお金じゃないけど、得しちゃった♪」
真希は嬉しそうにしてる。
確かに、お兄さんのお金って言ってたな・・・。
それから、私達は真希の家まで一緒に歩いてそこで別れた。
そこからの家までの道のりはまだ長い。
でも、肉まんパワーで、頑張って進むぞ!
私は手と耳と顔が次第に冷えていく中、さっき食べた肉まんの美味しさと温かさに励まされながら、また自転車を漕ぎ出したのだった。
1/11/2024, 11:32:46 AM