パチッパチッ
火が燃える音が絶え間なく聞こえる
周りには膝から崩れ落ちて絶望する人や泣きじゃくる人がいる
僕もそんな中の一人
この炎の燃料は私の住んでいたアパート
中には思い出の写真や大事な本、洋服などが入っていたが
それよりパソコンと通帳が燃えてるのが不味い
再発行はめんどくさいし、パソコンは30万もしたのだ
唯一の救いと言えば、ポケットの中にスマホと財布があったことだ
何も考えず部屋を出たにしてはよくやったと自分を褒める
ケータイの充電は30パーセント程
とにかく今日の寝床を確保しなければならない
友人に電話をかける
「なぁ、今日家泊めてくんない? 今家が火事になっててさぁ」
とりあえず要件を淡々と伝えているが、内心は焦って仕方がない
「まじかよ!家ならいくらでも泊めてやるから早く来いよ」
優しい友人をもったものだ
「ありがとう、すぐ向かうから鍵開けて待っててくれ」
「了解!」
会話を終え、電話を切る
燃えている我が家を後にして友人宅に向かう
向かう途中で差し入れを買いにコンビニに寄った後
何故か先程の友人から電話が来た
「もしも…」
「なぁ!俺ん家も燃えたんだけど」
どういうことだ?
自分の周りでこんなに火事が起こることがあるのか
「とりあえず、大切なものだけ持ってすぐに逃げろ
財布とスマホは忘れずにな」
得たばかりの教訓を友人に伝える
「わかった!とにかく逃げるわ!」
電話が切れる
とにかく友人のもとへ急ぐ
到着した頃には先程見た光景があった
絶望した集団の中にいる友人に話しかける
「気持ちは分かるぞ」
精一杯の慰めの言葉をかける
「うるせえ」
彼には伝わらなかったらしい
「いいから立て、早く行くぞ」
「どこへ?」
「俺たちの寝床だよ、もう漫画喫茶でいいから行くぞ」
彼の手を引き、まだ火の強い彼の家を後にする
とにかく寝床に急がねば
「ちょっと近くの漫喫調べてくんね?」
友人との電話でスマホの電源が減ってきたので彼に頼む
「いや、俺のスマホもう充電なくって…」
彼のスマホは無用の長物になっていた
(これだからスマホ中毒は…)
そう思いながら仕方なく、自分のスマホで地図を見る
近くの漫喫は1キロ先
しかし複雑な道の先にあるみたいだ
家なき子2人組は寝床を求めて歩き始めた
時には真っ暗な道があったのでスマホの懐中電灯機能を使う
後200メートルになったところで充電は残り5パーセント
着いた頃には無くなっていそうだ
そんなこんなで最近できたらしい満喫にたどり着く
受付を済ませてさっさと寝よう
そう思った時受付の人が言葉を発した
「アプリの会員証はお持ちですか?」
2人は膝から崩れ落ちた
「「どうしろっちゅうねん…」」
結果僕たちの寝床は公園のベンチだった
11/21/2023, 12:59:30 PM