lily

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私は自身の薬指にはめられている指輪を、長いこと眺めた。
だって、それが自分のもので、大切な人もそれをはめているんだとは思えなくって。

「なにしてるの?」
私が何よりも大好きな声。
『私たち、家族になったんだね』
「うん、そうだね。
…もしかして、嬉しくなかった?」
悲しい目を私に向ける彼。
『ううん、嬉しい!
ごめんね、不安にさせちゃって』
「…ふふっ、君は昔から僕の悲しい顔には敵わないんだね」
『あ、もう!また騙したの⁈』
「ごめんごめん」
笑いながら私の額にそっと口付ける。
『もう…キスすればいいと思ってるでしょ!』
「おまけに君の大好きなスイーツも奢るよ」
『…ありがたく頂くわ』
くすくすと笑いながら優しく抱きしめてくる彼。

私はこの人も、はめられている指輪も、
これから待っている日常も、
私だけの、私と彼だけの「特別」だ。
私はこれから特別な存在に囲まれて歩んでいくんだと思うと、楽しみだと胸が高鳴った。
私は微笑みながら、抱きしめてくれる「特別な存在」の背中に腕をまわした。

3/23/2023, 11:30:13 AM