コーヒーが冷めないうちに
朝の燦々とした眩しい光が、少しだけ開いた窓から差し込んでいる。隣で少し体を丸めて寝転んだ最愛の彼は、まだ起きなさそうだ。
時計を見ると短針が7を刺している。今日は2人共仕事も何も無かった筈だから、早く起きすぎたな。
彼の唇に1つ、柔らかい口付けをした後、部屋を出て1階へ向かう。
適当に服を着てキッチンに向かい冷蔵庫を開ける。1週間仕事で家を不在にしていた為、その状況は薄々察していたものであるが、やはりと言った様に空っぽ。
仕方無く他に保存している物を漁れば、パンケーキの粉を見つける。しょうがない、今日の朝食はこれにするか。
冷蔵庫から最低限残っていた食材を取り出して彼とお揃いのエプロンを付けると、調理を始める。子鳥のさえずりが朝を知らせているのが聞こえた。
こうやって調理するのは嫌いじゃない、むしろ好きだ。彼の不器用なところは理解しているし、それも愛おしいと思う。
作ったものを笑顔で美味しいと食べてくれる姿が見えるなら、いくらでも作ってあげたいとも思う。
物思いにふけっている内に何時の間にかいい感じにパンケーキが焼けている。皿を出して盛り付け、バターと蜂蜜をあわせた。
それと同時に、彼が大好きなコーヒーを用意する。彼とは違い甘党な俺にはコーヒーの良さは分からないけど。
彼のために入れるうちに、自分で言うのもなんだがプロ並みの腕前になってきている。淹れたてのコーヒーはかなり美味しそうだった。
時計を見て彼を起こしに行く為にエプロンを脱ぎ部屋に戻る。まだ彼は気持ちの良さそうに寝ていて、窓から差し込んだ光に照らされていた。
1つキスを瞼に落とした後、優しく揺さぶると睫毛がふるりと揺れ、ゆっくりと瞼が開く。普段のキリッとした瞳はまだ甘く蕩けていた。
俺はそれを見られることを幸福に思いながら、優しい声で彼に囁いた。
「おはよう。ほら、コーヒーが冷めないうちにおいで」
9/27/2025, 7:50:53 AM