『束の間の休息』
私の中に蠢く心臓は刺されても潰されても時を置けばまた元通りに動いてしまうので、夜眠り朝目覚めるように私は死んでは生きてを繰り返している。難儀な体に造られてしまったものだ。
きょうは人体実験の代用として致死量の見極めに参加した。外傷で死ぬのは痛いものだが一瞬で終わる。薬物で死ぬのは苦痛が長く続きがちとなるので嫌な予感はしていたが、点滴の滴下を何千何万と受けるさなかには予想通りに様々な反応に苦しめられた。
ようやく意識が遠のいたとき、何にも苦しまない時間がひととき訪れる。人ではない私が感じるこれは人が感じることはできるものなのだろうか。人になることのできない私はふとそんなことを思いながら、もう目覚めなくなることをほんのりと願いながら安寧に包まれていった。
10/9/2024, 3:35:50 AM