渚雅

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朝一番の教室はどこか不可思議な空気を纏っている。

誰もいない早朝の静寂の中、たしかにそこは普段通りの場所なはずが まるでよく似通ったけれど別の理の平行世界に迷いこんでしまったかのような、まるで見知らぬ空間に放り出されたかのような、そんな目眩がしそうな錯覚に陥る。


(温度がないから、か)

響き渡る笑声も、微かな靴音も、絶えず広がるざわめきも。日中であれば当たり前にそこにある諸々とすべて隔絶された一時。

妙に現実感がなくて神聖な恐ろしささえ感じられる空気。ほんの1時間もすれば少年少女の煌めきで眩いばかりの明るさに満ちるこの場所が、誰にも知られず静けさに揺蕩うこの瞬間が訳もなく愛おしかった。



テーマ:【誰もいない教室】

9/6/2025, 11:36:34 PM