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【ここではないどこか】 2023/06/28

今日は9月30日。

月の1番最後の日。

今日は雨が降っていてどんよりしている。

湿気が酷くて、髪がうねるのが気持ち悪い。

-完璧だ。

私は心の中でつぶやく。

周りを見たら、同じく電車待ちの女子高生達が、髪をしょっちゅう気にしているのが目に止まった。
同じ学校の制服を着ている女子生徒もいる。

-まもなく、1番線に、下り列車が参ります。
黄色い線まで、お下がりください。

お決まりのホームアナウンスが聞こえてくると、ちょうど遠くに電車が見えてきた。反対方面の電車のアナウンスもちょうど聞こえてきていた。

電車のドアが開く。

それと同時に反対方向に電車も着いたらしく、ドアが開く音が後方から聞こえてくる。

私は電車のドアをくぐり、1番端っこの席に座る。

車内で、発車のアナウンスがなる。

反対方向の電車の中を除くと、私と同じ私服を着ている生徒が何人か見えた。

対して、私が乗った電車には、同じ制服の生徒は、誰一人として乗っていなかった。




-まもなく、○○に到着します。お出口は、右側です。
お忘れ物なさいませんよう、ご注意ください。

車内にアナウンスが響きわたり、私は電車を後にする。
ホームには雨避けようの屋根も設置されておらず、改札もちても簡易的なものだ。
私はそのまま駅を出て、ボコボコの道路を進んでいく。
やがて林の中に入る。夏が終わったとはいえ、虫が居ない訳でもないため、少し鬱陶しい。

一気に視界が広がる。

そこには、古いサビだらけの小さな遊園地があった。

こんな林の奥にあって、まともな道路も備わっていなければ、そりゃあいつか忘れ去られてしまうだろう。

でも私にとって、そこは唯一無二の場所だった。

月の1番最後の日。

今日は雨が降っていてどんよりしている。

私はいつも、なにかの最後の日で、天気が悪い日にはこうして学校をサボってここに来ている。

1ヶ月の最終日で来れるなんて、本当にレアだ。

立ち入り禁止の札が剥がれた入場門を通り、私は園内の中央にある椅子に腰掛ける。

-でも、ここにきたいわけじゃないけど。

心の中で独りごつ。

ただ、林を進んでいたら見つけただけ。

ただ、この見慣れない奇妙な光景に惹かれただけ。

ただ、知っている人がいないこの場所が、い心地が良かっただけ。

あの日、雨の中初めて学校をサボった日。
ここに来ようなんて思ってもみなかった。

私が思っていたことは一つだけ。

ここではないどこかへ行きたい。

6/28/2023, 8:20:49 AM