マカロニサラダの妖精

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【時間よ止まれ】

亡くなった弟は、人知れず恋をしていた

弟の日記にはあるひとへの溢れ出す愛しく苦しい

気持ちが弟のミミズのような字で表されていた

そんな恋心ばかりの日記の中に気になる文があった

おそらく、暗号文である

「もう長くないようだ 日に日に悪化する症状、
ちを吐くこともあった 辛くて仕方ない
らいげつまで生きられるかどうかも分からない」

実に、同情を誘う暗号文だが、僕は笑った

弟はなんて馬鹿なのだろう 僕が解けない訳が無い

不自然な平仮名の各行の1文字目をひらがな表で考え、

その対になる文字、例えば「あ」なら「わ」

この文章では「とみか」

僕が2年前、騙すように弟から奪った僕の婚約者だ

弟よ、恨むなよ

両親から愛され、才能に溢れたお前がずっとずっと

どうしようもなく妬ましかった お前の出番はもうない

僕はニヤリと笑い、 ページを捲った

その瞬間、僕は全身の血の気が引くのを感じた

「もう遅いかな?ごめんなさい
とわに貴方に着いて行く
ひとりにしないで」

つまり、「共に」

とみかの字だ

…!「共に」という事はまさか!

僕は日記を投げ捨て走り出した

時間よ止まってくれ!とみかだけは、どうか!

弟は僕と彼女が暗号を解けることも分かって

僕への今までの報いとして最後に復讐をしかけたのだ

神よ!弟よ!どうか僕を許してくれ!

僕は弟と違って、とみか以外何も無いんだ!


9/19/2023, 11:32:24 AM