霜月 朔(創作)

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波にさらわれた手紙



未だ、紫を纏う空。
夜の明け切らない浜辺を、
一人歩く。

日が昇れば、
人々の笑い声が響く、
この砂浜も、海も、
今は、波の音が主役だ。

小鳥たちも寝ぼけ眼の、
こんな時刻。
きっと、君は、
未だ夢の中の住人だろう。

誰も居ない海に、
俺はいつも君に隠してる想いを、
そっと投げ込む。

だって。
どんなに君に憧れていても、
恋い焦がれていても、
君にとって俺は、
親友でしかないから。

砂浜に指で書く、
君への想い。
ずっと言えない、
愛してる、の一言。

涙で滲む俺の告白を、
波がそっと消し去っていく。
波にさらわれた手紙は、
君には永遠に届かない。

明るさが増す空に、
俺は小さな溜息を吐く。
今日もきっと、
君と親友でいられる。

遠い水平線に目を向ける。
頬を撫でる潮風が、
いつもより少しだけ、
優しい気がした。

8/3/2025, 2:14:04 AM