目が覚めれば仕度をして仕事に行き、終電で帰れば泥のように眠る、そんな日々を送っていたボクに『冬の足音』が聞こえたのは、もう真後ろに立たれたくらいの距離だったんだ。
ザッ。ザザッ──駅からの帰り道に横切った公園で、公園の砂の地面をスニーカーが削るような音がして、ボクはバッと振り返り、でもそこには誰もいなくて、そこで吹いて来た風が、思いのほか冷たくって──。
「は? ストーカー?」
そうじゃない。季節感はおろか曜日感覚すら失くしてたから、冬の足音に気付けなかったんだよ、ってハナシ。あれはきっと冬将軍じゃない、冬足軽の足音だったんじゃないかな?
「ハァ。冬足軽ってなんだよ、オマエの薄着の言い訳聞いてたのに、なんでそんな新キャラが出てくんだ……わかった、もういい。とにかく寝ろ」
冬足軽もきっと、寒そうなカッコしてたんじゃないかな。ほら、昔のコントみたいに「イッキシ!」なんて、そんなクシャミしてそうじゃない?
「あーうん、なんか気の毒だから、ダウンでも着せてやれ。夢ン中なら出来るだろ? っと、体温計……38度越えてるぞ? 風邪なんか引いてんじゃねぇよ、ったく!」
12/4/2025, 9:30:33 AM