「ねえねえ、ひとくちあげるよ。」
「いらない。」
自分から着いて行きたいと言っておいて
ものの数分でつかれただの休みたいだの騒ぐから
仕方なく入った喫茶店。
少しはおとなしくなるかと思ったら逆だ。うるさい。
「なんで。あげるって言ってるだけじゃん。」
「もらったら僕のもお前にあげなきゃいけないだろ。」
「別にいいよ。いらない。」
「お前が良くても僕が嫌なんだ。」
貸し借りは嫌いだ。どんなに小さなことでも。
「はーん。案外気にしいだね。」
「うるさいよ。少しはおとなしくしていろ。」
「ねえ、あなたのケーキも食べたいからじゃない。
本当にただこれを食べてほしかっただけ。いちご、私に譲ってくれたんでしょ?」
「別に。」
つやつやのいちごのケーキは残りひとつで
僕はそれ以外の他のケーキには惹かれなかった。
そしてこいつもこれがいいって言ったからなんだかもうどうでもよくなっただけ。ただそれだけだ。
「じゃあいちご1つあげる。あーん。」
「ああもう…わかった食ってやるからおとなしくしてよ。」
1つだけのいちご。
今まで食べたどのいちごよりおいしくて
お腹いっぱいになった。
1つだけ
4/4/2024, 5:06:07 AM