『空に溶ける』
青空を見上げては思い出すのはタバコとコーヒーの匂い。
おじさんはいつもタバコとコーヒーを嗜むのが好きだった。
小さい頃はタバコで一部の親戚からは
文字通り煙たがられていたが、僕は好きだった。
周囲がきっちりしている大人な反面おじさんは自由奔放で
「自分のやりたいようにやる。」が口ぐせだった。
そんなおじさんのタバコの煙は工場の煙突とかと違って
細くゆっくりと上がっていく。
青空の下でタバコとコーヒー。
今思えば随分と絵になる人だった。顔もイケメンだった。
周囲と価値観が違うだけで
みんなおじさんを見ようとしていなかった。
おじさんのお葬式も涙を流す人より
悪口を言う大人の方が多かった。
誰がなんと言おうとおじさんは僕の憧れだ。
タバコが吸えるようになったら、おじさんが教えてくれなかったタバコの銘柄を当ててコーヒーと一緒に嗜んでみるよ。
そんな思いを馳せながら空を見上げていた。
火葬場の煙突からは優しく煙が上がって空に溶けていった。
まるでおじさんの吸っていたタバコのように...
語り部シルヴァ
5/20/2025, 10:41:30 AM