Ton_Ton

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 多分、どれだけ静寂で孤独な空間の中だろうと、僕は端っこの方で三角座りをしているだろう。自分に自信が無いとか、引っ込み思案だとか、そういう類の言い訳を超えて、僕は本能的に物事の中心を避ける癖がある。決して誇らしい癖ではないし、何なら本当にそんな癖が自分にあるのかどうかすら、断言できやしない。

 中心には必ず強い重力が発生していて、僕がそこで暮らそうとすると、重さで押し潰されてしまう。だけど僕以外の誰かが中心に立った時、重力は全く仕事を果たさず、むしろスポットライトが存在を際立たせてくれる。

 中心に立てる人間を羨ましがったり嫉妬したりすることが出来れば、僕にも救いがあったかもしれないけど、実際は遠い存在だと割り切った尊敬の眼差しとか、アイドルに向けるような好意とかしか芽生えない。

 静寂の中心に立てる人間が大好きだ。きっと僕とは違って、眩しくて美しくて清廉で信念があって、大きな壁にも立ち向かえるパワーに満ち溢れている。僕は、そのパワーに密かな好意を抱きつつ、名も無き「僕」として時間をやり過ごす。

10/7/2025, 1:24:39 PM