オバタン

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私にも若い頃はあった。そりゃそうだ。オギャーと生まれていきなり四十路を迎えたわけじゃない。それなりの人生経験を経て、今がある。
お祭りの思い出といえば何とも甘酸っぱい。それでいて初で、純粋。高校生の頃に好きだった、野球部の男の子。初めてデートしたのが私の住む土地で有名なお祭りだった。張り切って用意した浴衣を母に着せてもらい、髪もめいっぱいめかし込んだ。お互いに緊張して上手く話せなかったあの頃の淡い気持ちは、いったいどこに忘れてきたんだろう。
拝啓、我が母。あんたの娘は今じゃすっかり汚れちまったよ。祭りに出向くより家にいたい。わざわざ人混みに飛び込むより、ソファーでごろごろする方が性に合う、そんな年頃になりました。
浴衣を着せてくれた母はいつしか皺が目立つようになった。私とて人のことは言うまいな。目尻にできた笑い皺が、日に日に濃くなってきたとも。

7/28/2024, 11:37:16 AM