ずい

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『無色の世界』

死んだら三途の川の岸に立つのだと思っていた。
思い出すのは最期の瞬間、信号待ちをしてた私たちを、わき見運転をしていた車が襲った。
隣にいた子どもを庇おうと腕を広げて。

気づけば、何もない無色の世界にきていた。

歩いても歩いてもどこにもたどり着かない。来た道を戻っても無色のままだ。疲れてその場に座り込んでしまった。

「あなた」

ふと、彼女の声がした。高くて可愛らしくて、それでいて力強い声。子どもと一緒に三人で手を繋いで待っていた。
あの時彼女がどうしていたか思い出せない。
突然頭上から差し込んできた光の眩しさに、上を見上げると、光の向こうからまた私を呼ぶ声がした。

「あなた」「パパ!」

光へ向かって両手を伸ばす。
だんだんと薄れていく意識に目をつむった。

4/18/2024, 11:21:45 PM