烏羽美空朗

Open App

カーテン越しでもわかるほどに、今日は天気が良い。なんだか自分の調子も良いみたいだし、少しだけ遠出をしよう。あまり使っていない自転車の鍵を回し、人の波に突っ込まないよう、猫やゴミさえも轢かないように細心の注意を払って飛び出した。少し前までは心地良かった風も既に冷たいだけの秋風になっており、通行人が全くいないような脇道に入った頃には、頬がすっかりと冷え切っていた。

二十数分後、ペダルをこぐ足が止まったのは何も無いあぜ道。石と泥だらけででこぼことした道に疲れ、手押しで自転車を運びながら、田んぼと田んぼの間を歩いていく。既に稲刈りが終わったそれは少し寂しくもあるが、落ち穂を突き、稲株からちょこちょこと顔を出す鴉達はとても可愛らしく、美しい。「烏羽」と俺の名前に入れる程に、俺は鴉が好きなのだ。

ふと、一斉に鴉達が飛び立ち、俺もつられて空を見る。何の障害物もないここで見上げたことにより、俺はようやく今日の空には雲が一つも無いことに気付いた。快晴というものだ。
「美空朗」というだけあって、俺は空も好きだ。曇り空だって嵐の中だって、生まれたときからずっと、空は一秒たりとも美しさを失くしたことは無い、と思っている。

それにしても、見事に空一色。遠くの山にさえも雲が見当たらない。あまりにも見事な情景だったので、俺は胸ポケットからスマートフォンを取り出し、一枚だけ写真を撮って引き返した。

どこまでも続く青い空

10/23/2022, 1:07:37 PM