『そっと』
子供の頃、ジュウシマツを飼っていた。
すっかり慣れていたので、たまに鳥籠から出して、部屋の中で放すこともあった。
私から追いかけることはしなかったが、ご機嫌な時は肩や頭に乗ってピチュピチュ鳴くし、手を差し出せばちょこんと指にとまる。
そっと手で包めば、温かくてふわふわした感触。
私の手の中でトクトクと脈打つ命。
キョロキョロと首を傾げてこちらを見上げる様に、言いようもない愛しさと何故だか泣きたくなるような切なさを感じたものだ。
あの頃のあの経験が、その後の生き物に対する私の態度を決めたと言える。
近づき過ぎず、従わせようとせず、向こうから寄ってきてくれたら相手をする。
あとは、そっと見守るくらいでちょうどいい。
1/15/2025, 6:25:04 AM