わをん

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『病室』

黄色い花瓶に据えられた花が萎れて項垂れている。自分で変える気力もなくもうずっとそのままにしてあるのを看護師が見かねて処分してくれた。
最後に身内が見舞いに来てからもう1ヶ月が経つだろうか。花なんて珍しいものを、といつもの調子で言ったときにいつものように黙りこくった彼女とはそれきりになった。いつものやりとりと思っていた。それがいけなかったのだろうか。
入院するに至ったのは好きなものを好きなように食べた結果だった。彼女に諌められたことも何度かあったような気がするけれど意に介さずにしていたらいつしか何も言われなくなってしまっていた。いつもの彼女を造ったのは自分だった。
看護師以外には誰も来ない病室でどうにかしてくれと当たり散らすこともできないぐらいに身体の不調が訴えかけ精神が削られてくる。何もかもがおまえのせいだと自分自身が問い詰めてきて苛まされる。
すまなかったと声に出しても黄色い花瓶に花は戻らなかった。

8/2/2024, 11:53:53 PM