新しい靴を下ろしたのに雨が降ったり、好きな人にすでに相手がいたり、それを全て運が悪いと言っていたけど、どうやら本当についていない人間なのだと実感する「大丈夫です、なんとかします」切れた電話にため息をつく。なんとか、って、何よ。ため息ひとつ、夜空に消えていく「どうしようか」「さすがだね」見知らぬ土地で聞き慣れた声、驚いて振り向けばやあ、と片手を上げる影「なんで」ここに、までは言えず、近づいた彼は相変わらずのスーツに身を包み、笑顔を浮かべている「なんとなく、嫌な予感がして」「そんな理由で来る場所じゃないのよ」「でもホッとしただろ」「さすがだね」さっきの彼と同じように笑って見せる「お腹空かない?」遠くに見える灯りを指差し歩き始める。隣に並ぶ彼からいつものタバコの香りが鼻を掠める「どうしてここがわかったの」「俺は君のスーパーマンだろ」そうだ、どうしようもなくなったときは、颯爽と現れて私を助けてくれる「私ってラッキーな人間かも」「え?」独り言のように呟いた言葉に自分で笑ってしまう「ビール飲んでもいい?」「ダメなんて言ったことあるかい」「いいよ、って言わせたいの」「もちろん、いいよ」その腕に自然と絡まることだって、今日は許して。
星空の下で
4/6/2024, 2:37:15 AM