気付いた時には、手遅れだった。
早死してしまった弟の代わりに当主として、男として育てられた。
偽りだらけの私が彼に出会ったのは学舎で。
唯一、心から信じられる人になった。
友として、仲間として、同性としての絆だったはずなのに、いつの間にか私だけが違う感情を握りしめていた。
偽っているのだから、同じ想いを返してもらえるわけがない。
わかっているのに、かわいいと言ってもらいたい、好きだと思ってもらいたい、と女の私が顔を出す。
彼しか好きになったことがないから、これが本当の恋かはわからない。
でも、本気の恋だった。
それなのに。
彼は私の妹の許嫁となり、私は彼がずっと夢見ていた地位に就くこととなった。
こんな見事な不協和音はあるだろうか。
これまでもなかなかに壮絶な人生を歩んでいると思っていたが、神様は私を憎き恋敵だとでも思っているのか。
「あーあ」
神様なんていない。
もし本当にいたら、ズタボロにしてやる。
【本気の恋】
9/12/2024, 2:30:50 PM